山も人生も道のりを楽しむ。妙見山で見つめた、これからの歩き方と還る場所|山旅人コラボツアー
「これからをどう歩くか」と「最期はどこに還るか」。
2026年10月20日、登山・ハイキング専門の旅行会社「山旅人(やまたびと)」さんとのコラボツアーを開催しました。能勢の妙見山に上杉尾根コースから登り、山上の循環葬の森へ。秋の山歩きの様子をお届けします。
9時15分、妙見口駅に集合


スタートは、大阪最北端の駅として知られている、能勢電鉄の終着駅・妙見口駅です。実は、前日までの予報は雨。登山は難しいかもしれないと心配していましたが、能勢町は一日雨が降らず、出発時には太陽も顔を出してくれました。

山旅人さんのツアーは、基本的にお客さま8〜10名にスタッフ2〜3名。今回は、お客さま9名に対して、山旅人さんと循環葬のスタッフをあわせて7名という、にぎやかな顔ぶれです。
出発前には、山旅人代表で今日のリードガイドを務める堀さん(写真中央の、黒いTシャツにブルーのボトムの後ろ姿)を囲んで円になり、「山のものは石一つ、葉一枚も持ち帰らない」「ごみはすべて持ち帰る」という山のマナーを全員で確認しました。
鳥の声と川の音に包まれて

歩き始めはしばらく車道。鳥のさえずりと、すぐ横を流れる川の水音が響きます。先頭を歩く堀さんに続いていると、牛歩のようにゆっくりとしたスピードであることに気づきます。


いよいよ、上杉尾根コースへ
車道を抜けて、上杉尾根コースの山道へ。歩き始めて20分ほど経った10時、最初の休憩をとりました。湿度が高く、じんわりと汗がにじみます。雨のあとで苔もしっとり。荷物を下ろして、水分補給をしました。

再び歩き始める前に、堀さんからは「汗は出るけど、息は切れない」ペースこそが、登山のペースだというミニ講習。気づけば標高差65mほどを登っていたのに、まったく息は上がっていません。

さらに、コンパスアプリで地図の向きと実際の方角を合わせるコツも教わりました。現在地の緯度・経度は、万一のときに救助を呼ぶための大切な情報になるそうです。
ここから、本格的に山道を登っていきます。





歩き方一つで、山はもっと楽になる
2回目の休憩までに、さらに標高差およそ100mを登りました。ここで、堀さんから歩き方のお話がありました。歩幅は前後に狭く、膝は一歩ごとにしっかり伸ばし、おへそを前に。斜面の木がまっすぐ立っているように、重心を真下にかけると滑りにくくなるそうです。


登山のペースと歩き方を熟知している堀さんは、登りながらでも、街を歩いているかのように、さまざまなお話をされます。

道中では、能勢の名産・菊炭のことも話題に上りました。原木は「台場クヌギ」と呼ばれるクヌギ。焼き上がった炭の断面が菊の花のように美しいことから、その名が付きました。高級品として、特に茶道で重宝されています。
自然と人の距離を思う

木々の切れ間から、眼下に広がる街並み。道中の景色を楽しみながら、参加者同士の会話も弾みます。話題の一つが、最近ニュースになっている熊の出没でした。
人の暮らす街と奥山の間にある里山は、かつて熊との境界の役割も果たしていました。最近、熊の出没が増えている背景には、里山が失われ、山からいきなり街になったこともあるとされています。
「山に熊がいるのは当たり前」と、堀さん。必要以上に怖がるよりも、正しく知って備えることが大切。山を歩きながら、自然と人の関わりにも思いがめぐりました。


妙見山は、あと1カ月もすれば紅葉が見頃に。「紅葉したら、すごくきれいだろうね」と話しながら、色づいた様子を想像しました。春の4月頃には、山桜もあちこちで咲きます。
体力は落ちても、技術は積み上がる
11時40分頃に最後の休憩です。ここまでで登った標高差は約340m。参加者からは「あっという間。こんなに息切れしないで歩けるんだ」「ハーハー言うのが登山だと思っていました」という声が上がりました。
ここで話題になったのは、水分と食事のとり方。のどが渇いたと感じたときには、すでに脱水が始まっているそうです。だから水分は前日からしっかりとり、当日も渇く前にこまめに飲む。食事も一度にたくさん食べると血流が胃に集まり、脚が重くなるため、少しずつ口にするのがコツです。
「水をこまめに飲んだ方がいい」といわれる理由まで分かると、今どうしたらいいのかを自分で判断できるようになります。堀さんは、こうした知識こそが年齢を重ねても山を歩くための力になると話します。

「体力や筋力は、年齢とともに必ず落ちていきます。でも、技術や知識、経験は積み上がっていくもので、減ることはないんです。
21歳で山を始めた僕と、50歳の今の僕。体力も筋力も、当時の自分には遥かにかないません。それでも、一緒に日本中の山を歩いたら、今の僕のほうが登れるんですよ。積み重ねてきたものがあるからです」(堀さん)
山旅人さんのツアーには、84歳で北アルプスの蝶ヶ岳に登った方も。60代後半から登山を始め、20年かけて学び続けてきた方だそうです。
霧の杉林を抜けて


山上が近づくと、杉林に霧が立ちこめ、木々の間から光が差し込みます。「別世界に来たみたい」という声が上がるほど、幻想的な景色でした。




12時半ごろ、全員で山上に到着しました。山旅人さんのガイドはここまで。循環葬の森へ向かう前に、堀さんがご自身の体験を話してくださいました。

「仕事柄、テント泊をよくするんですが、ときどき友人と、本当に人のいない森の中で寝ることがあるんです。循環葬を運営する小池さんから話を聞いてすぐあとに大峰山へ行ったとき、ふと感じたことがあって。
テントの周りには、木も草も苔も、虫も鳥も、数えきれないほどの命がある。ほんの数百メートルの範囲を切り取っただけでも、とんでもない数です。それがすべて循環しているんですよね。誰に見られるわけでもなく、そこで亡くなって、土に還って、何かに食べられて、また次の命につながっていく。そう考えたとき、僕ら人間だけが違うんだなと思ったんです。
墓石や樹木葬、散骨、それに今回紹介いただく循環葬。どれが良いかという話ではありません。先祖を敬う気持ちはきっとどれも同じ。でも、選べるということが大切だと思うんです。自分や、自分の母親がどれを選びたいか。それに寄り添えることが大切で、その選択肢の一つとして、循環葬はすごく面白いと思います」(堀さん)
登ってきた皆さんを、森でお迎え


少し休憩を挟んだあと、皆さんで循環葬の森へ。案内を担当したのは、フォレストアテンダントの二岡です。
入口の看板は、妙見山の土を打ち固める「ラムドアース(版築)」という伝統工法でつくられています。森のルールは「持ち込まない、持ち出さない」。間伐によって光が差し込むようになった森では、埋葬とともに森そのものも育てています。


憩いのエリアでは、デッキに腰掛けてひと休み。椅子は、森を感じられる角度に傾けてあります。生前契約をされた方の中には、本やお茶を持って森林浴に訪れる方も。お墓まいりというより、森で過ごす時間を楽しむ場所です。




続いて埋葬エリアへ。デモンストレーションでは、パウダー状にしたご遺骨(動物の骨を使用)を、30cm四方の土と実際に混ぜ合わせていきます。
ご遺骨を土の上に撒く「散骨」とは異なり、循環葬は土の中にしっかりと還す「埋葬」。混ぜ合わせる作業はご家族の手で行い、声をかけたり、思い出を語ったりしながら見送る大切な時間になります。説明の後は、参加者の皆さんから質問が投げかけられました。
Q. すべてのお骨だと、どれくらいの量になりますか?
関西では一部のお骨を拾うことが多いのですが、関東のようにすべてのお骨を拾う「全骨」の場合は、デモで使っている袋(縦17.7cm×横20.0cm)が、いっぱいになるほどの量になります。以前、千葉で全骨のご遺骨を量ったときは、女性で約1.5kg、大柄な男性で約2.0kgでした。
お墓じまいで4人分のご遺骨をお預かりしたときは、袋を4つ使うほどでした。埋葬へはお一人でいらしていたため、スタッフも一緒に森へお還ししました。
Q. 亡くなってから、どのタイミングで埋葬するのですか?
タイミングは自由です。四十九日の後、すぐに埋葬する方もいれば、10年ほど経ってから埋葬する方もいます。埋葬の前には必ずお寺が法要を行います。法要への立ち会いは自由で、宗派や国籍も問いません。
Q. どのくらい前から契約する方が多いですか?
早い方は30代で契約されています。「最期を決めたら、すっきりした」と、ペーパードライバーから運転を再開したり、音楽を始めたりと、前向きになられる方が多くいらっしゃいます。
山歩きと人生を重ねる

「頂上に着くことだけが目的じゃない。そこまでの道のりをどれだけ楽しめるかが大事なんです」と堀さん。山も人生も、きっと同じなのかもしれません。
自分の足で登った山の、その先にある森。「これからをどう歩くか」と「最期はどこに還るか」を、同じ一日の中で考える時間になりました。
2027年4月9日にも、山旅人さんとのコラボツアーを開催予定です。次は、山桜が咲く春の妙見山を一緒に歩きませんか。詳細は決まり次第、お知らせします。

文:南澤悠佳
写真:Ayaka Hirokawa