真野古道再生プロジェクト始動ー森がつなぐ「人」と「自然」の新たな巡り
循環葬の森の千葉拠点となる真野寺は、1300年の歴史を誇り、繁栄や安寧を求めて人々が集う地域の拠り所でした。
その歴史を物語るように、寺院へとつながる森の古道がいくつも残されています。寺の鎮守を祀った塚や道祖神、神社などが点在し、かつて人々がこの道を行き交っていた面影を今に伝えています。しかし、昭和初期に幹線道路が整備されたことで往来が絶え、古道は次第に荒廃が進んでいきました。
循環葬の森とも一続きになっているこの道を再生したい。
古道を中心とした人の巡りを生み出したい。そんな思いから循環葬を運営するat FORESTと真野寺による「真野古道再生プロジェクト」が生まれました。
この記事では、2026年5月9日に開催されたイベントの様子をお届けします。


念願の古道整備がいよいよ始動

履き慣れた地下足袋やニーパッドを持参するなど、古道整備への熱量の高さがうかがえる参加者の皆さんを前に、主催者から開会の挨拶がなされました。
伊藤(真野寺住職):
真野古道は手付かずの自然が残っていて、森の力や空気、エネルギーを浴びられる心地いい空間です。昔の人たちはどういった思いでここを歩いたのだろうと、思いが巡る場所でもあります。
at FORESTは日本の森を整備していくという目的を持ち、その一つの手立てとして循環葬を運営しています。森を未来へ継承していくという思いを共有していたことから、自然な流れで「一緒に古道を整備していきましょう」ということになりました
小池(at FOREST代表):
実は、今日のイベントは一年越しで実現しました。伊藤住職とは循環葬の森の計画がスタートしたときから、古道を整備しようと話し合っていたんです。
今日をスタートとして、真野古道を復活させるプロジェクトを皆さんとともに進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
森の役割と「循環」を学ぶ

プロジェクト第一弾となる今回のイベントの主目的は、古道整備です。通行を阻害する枝をはらったり、蔓を切ったりしながら歩みを進めます。
道中では、ガイドをつとめる堤さんが「循環」と「継承」という切り口で、森と人の関係について話をしてくれました。
堤(森のガイド):
山や森が汚されたり、なくなったりすると困ることってなんだと思いますか。
そう、水です。
山の土がフィルターだと思ってください。雨が山のフィルターを通って私たちの飲み水になるまで、だいたい20年といわれています。山にゴミを捨てたら、20年後の飲み水はゴミに汚染されたものになるんですよね。
それと、最近クマが人里を襲うニュースをよく目にしますよね。あれも人間が山に捨てたゴミが一因になっているんです。コンビニのおにぎりやお菓子のゴミをクマが舐めたら「ドングリよりもおいしい!」ってなりますよね。昔は人がいたら警戒して出てこなかったクマが、人=おいしいものを持っていると思って寄ってきてしまうということです。
自分たちのしたことが巡り巡って還ってくる。森を守ることは自分たちを守ることなんですよね。こうして森に手を入れて整備をするのは、歩きやすくするためだけでなく、野生動物に人の気配を感じさせて警戒させるという意味でも重要なのです。
「ヌタ場」の整備で縮まった、心の距離
一行は「ヌタ場」と呼ばれるエリアに到着。ここはイノシシが寄生虫を落としたり、傷を癒したりするために使う泥浴び用のぬかるみです。
イノシシのお風呂場ともいわれるのですが、人にとっては足を取られて歩きにくいポイントとなるため、共生のために整備することにしました。
スタッフの「この大きなヌタ場を、丸太を使って整備します!」という声を聞くと同時に、皆が一斉に作業に取りかかりました。
「まずは水を抜く水路を掘りましょうか」
「では、こちら側から土を掘って埋めていきますね」
「丸太は細いのと太いのを交互に並べると安定するよ」
「私は隙間を埋めるスギの葉を集めてきます」



経験や知識をもとに声をかけ合い、協力して、みるみるうちにヌタ場を埋めていきます。ぬかるみが深く丸太が浮いてしまう難所も、「二段にしたらどうか」「丸太をハンマー代わりにして打ち込もう」など、アイデアを出し合って乗り切りました。


見事に整備が完了すると自然と拍手と歓声が湧き起こり、誰からともなく「記念撮影をしよう」の声が。達成感と一体感につつまれ、参加者同士の距離も急速に縮まっていきました。


それぞれの思いを分かちあう時間
作業の後は真野寺の建立にも関わる鹿島明神を祀った「鹿島塚」などに立ち寄り、ゴールの真野寺へ到着。昼食をとりながら、一人ずつ自己紹介と感想を共有しました。


参加者からは、次のような声が寄せられました。
参加者の声
「日頃から山の整備に関心があり、ぜひ参加したいと思った」
「自然の中で体を動かすのが好きで、皆で一体感を持って作業できて楽しかった」
「『循環葬』の考え方に共感し、自分が眠るかもしれない場所の整備に関われることに幸せを感じる」
「かつてこの場所で遊んだ思い出があり、荒れた森がきれいになる様子を見てうれしく思った」
「森の生態系や歴史について専門的な話が聞けて非常に有意義だった。特に、ゴミ問題とクマの生態の関係についての話は印象深く、多くの人に伝えたいと感じた」
「海洋散骨を考えていたが、森に還るという選択肢も素晴らしいと感じた」
「両親が眠る循環葬の森を、自分の手で整えることができてうれしい」
それぞれの背景や想いが語られる中で、参加者がこの活動を単なるボランティアではなく、自然との関わり方や自身の生き方・死生観を見つめ直す機会と捉えてくださっていることがわかりました。プロジェクトの発起人からは今後の活動に向けた思いが語られました。
伊藤:
お寺というのは古来から多くの人が集い、語らい、生き方を発見する場所だったはずです。このようなイベントを通じて、宗教にとらわれずに人々が集い、命のつながりを感じられる場所として復興していけたらと思います。
小池:
私たちat FORESTは、循環葬を通じて真野寺さんやこの豊かな森と出会うことができました。皆さんにも、この古道整備プロジェクトを通じて、自然との新しい関係性を育んでいただけたらと思います。
また、真野寺さんや森と関わることで、ご自身にとっても、自然にとっても豊かな時間が生まれていく。そんな循環が、これから少しずつ広がっていけば、うれしく思います。
古道整備という活動を通して、対話や循環を生むプロジェクトは始動したばかりです。
今後のイベントにもご期待ください。


プロフィール

堤 克仁(写真左)
ツツミ建築設計室代表
高校時代から建築の道を志し、2000年から新潟県妙高市に在住。10年にわたり山のガイドをしながら設計事務所と宿泊業を営む。現在は千葉県木更津市に居を移し、自然環境と人の営みの在り様を建築設計と盆栽を通して発信。
伊藤尚徳(写真中央)
南房総市真野寺 住職/鋸南町の円照院・極楽寺・往生寺の住職も兼務
修験道の入峰修行を契機に唯識・華厳思想への関心を深め、国際仏教学大学院大学で博士(仏教学)を取得。30歳の節目には、真言行者の二大練行とされる八千枚護摩供、虚空蔵求聞持法を修行。
小池友紀(写真右)
at FOREST 代表取締役CEO。広告クリエイティブの世界で15年活動。ホテル、コスメ、こども園などのコピーライティング、コンセプトメイキングを手がける中、先輩や祖父母の死、両親のお墓の引越しをきっかけに、日本の墓問題と向き合う。死と森づくりを掛け合わせた循環葬を創案し、2023年夏に関西・北摂の霊場 能勢妙見山にてサービスをスタート。