循環葬の森は、どう変わりはじめているのか—日本森林学会で報告した2年間の記録
能勢妙見山の森は、整備開始から約2年が経ちました。
そのあいだに、植生はどのように変化してきたのでしょうか。
2026年3月、茨城県つくば市で開催された「第137回 日本森林学会大会」に参加し、その経過を発表しました。昨年の日本景観生態学会に続き、2度目となる学会参加です。
適切な管理で、森はどう変わるか|能勢妙見山
今回は、大阪・能勢妙見山を対象に、循環葬の森林アドバイザーでもある神戸大学・石井弘明教授の研究室との共同研究として、整備開始から約2年間を経て、植生がどのように変わる可能性があるのかを報告しました。
調査では、埋葬エリア・目標植生エリア・参考植生エリアの3区分を比較しています。現在の埋葬エリアは、スギとヒノキが全体の6割を占め、12樹種のみ。人工林らしい、単純な構造です。
これに対し、スギ・ヒノキを段階的に伐採しながら在来樹種を植えていく管理を行うと、樹種の多様性が高まり、その土地本来の森に近づいていく傾向が確認されました。
循環葬の森として整備・管理することで、生物多様性の回復につながる可能性を、データとして示すことができました(発表ポスターは記事末尾に掲載しています)。
「自然に還る」という言葉にとどめず、その過程をデータとして確かめていくこと。言葉だけで終わらせないための根拠を、少しずつ積み重ねています。
日本景観生態学会での千葉・真野寺での発表が「整備前後の比較」であったのに対し、今回は「適切に管理した場合、森はどのように変化していくのか」を加えた報告となりました。
会場での反応

ポスター発表の説明は、研究を行った神戸大学の学生が中心となって行いました。多くの参加者が立ち寄り、「この森の所有者は誰か」「植生の遷移はこの方向で進むのか」といった問いが交わされました。
循環葬そのものへの関心も高く、パンフレットを手に取ってくださる方が多くいました。森林研究を専門とする方々から「自分も自然に還りたい」「選ぶならこういうかたちがいい」という声をいただけたことは、森林研究の視点から見ても、森づくりの一つの実践として関心を持っていただけた、という手応えにつながりました。
学会で見えてきた、人と森の関係性の価値
学会では、森林を持続させる難しさについても議論が交わされていました。その中で印象的だったのは、経済的な価値だけでは測れない「人と森の関係性」の重要性です。
土地を所有することにとどまらず、関わり続ける理由があること。
森を訪れる人がいて、手入れをする人がいて、その営みを支える仕組みがあること。
循環葬が取り組んでいるのは、この関係性の設計といえます。
社会を支える基盤となる森、公共性を持つ寺院、森を育むフォレストメイト、そして仕組みを支える事業者(at FOREST)。それぞれが関わり合う構造は、学会で語られていた問いへの一つの実践的な応答でもあります。
2025年度グッドデザイン賞・ウッドデザイン賞2025での受賞も、人と森の関係性を設計するこの取り組みへの、一つの評価だと捉えています。
研究と実践のあいだで

今後、能勢妙見山では埋葬エリアを対象に、土壌調査も予定しています。ご遺骨が土壌や植生にどのような影響を与えるか。「人が還ることで森が変わる」というプロセスを、継続的なデータとして蓄積していきます。
森と、生きる。
森に、還る。
森を、つくる。
その言葉を、数字や記録として少しずつ確かめていくことも、私たちの役割の一つだと考えています。

森に還る研究所について

森に還る研究所は、自然葬への理解をより深め、その価値を社会へ広く届けることを目的に、循環葬®︎「RETURN TO NATURE」を運営する at FOREST株式会社によって、2025年7月に設立されました。
海外における自然葬の事例や、学会での発表内容、自然葬に関する各種調査結果などを収集・整理し、発信していきます。
文:南澤悠佳