お墓じまいで得た安心感ー半年かけて重ねた対話

自然葬を知る

ここ数年、「お墓じまい」という言葉を耳にする機会が増えました。

日本におけるお墓じまい(改葬)は年間15万件(※)を超え、1日にすると400件以上。多くの人がそれぞれの事情の中で、お墓のあり方を考え直しています。

そんな中、手順や費用、手続きといった一般的な情報を見聞きする機会は増えています。一方で、実際にお墓じまいを経験した人たちが、どのように話し合い、やり取りを重ねながら進めていったのか。そうした“当事者の声”に触れる機会は、まだ多くないのかもしれません。

ご両親のお墓じまいを経験されたM.Tさまに、当時の様子や、それを経た心境の変化を伺いました。

※厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例」より

「お墓をどうするか」という現実に向き合うとき

お墓じまいを考えた、最初のきっかけを教えてください。

M.Tさま :
我が家のお墓は、兄が守ってくれていました。
けれどその兄が体調をくずして、車椅子が必要な生活になったんです。そんな中で、「これから先、お墓を守りつづけるのは難しいかもしれない」と話すようになりました。

ご実家のお墓は、どのような場所にありましたか。

M.Tさま :
山の上、それもかなり急な坂道を登った先にありました。健康な人でも、お墓まいりをするだけで息が切れてしまうような場所です。兄の身体のこともあり、「この先どうしていこうか」と、きょうだい皆で現実的に考えるようになったんです。

まずは何から始められましたか。

M.Tさま :
まずは、家族と話しあいをしました。うちは6人きょうだいですが、幸いなことにみんなとても仲が良いんです。「誰か一人に負担させるのではなく、皆が元気なうちに墓じまいをしよう」と、話がまとまりました。
兄は体調の関係で動くことが難しい状況でした。ほかのきょうだいとも相談して了承を得た上で、実際の手配やお寺とのやり取りは、兄とも相談しながら主に私が進めていきました。
それからお寺に連絡して、兄と一緒に、お墓の状況を確認しに行ったんです。

お墓じまいは「対話の積みかさね」だった

実際に、お墓じまいはどのように進んでいったのでしょうか。

M.Tさま :
大まかな流れとしては、墓石を動かしてお骨の状態を確認し、閉眼供養をして、お骨を取り出して、墓石を撤去し、最後に整地をする。言葉にすればそうなのですが、実際にはそう簡単には進みませんでした。
両親が生きていた頃は、お寺とのお付き合いも深かったので、お寺側からは「そのまま(お墓を)置いておいてほしい」と、引き止められもしました。

そうした声に、どのように向き合っていかれたのでしょうか。

M.Tさま :
私たちのおかれた状況を、正直にお伝えしつづけました。 兄が病気を患っていることや、私たちも年齢を重ねてこれ以上お墓を守ることが難しいこと。兄と二人で10回、20回と電話をかけ、ありのままを繰り返しお話ししました。そうして根気よく対話を重ね、ようやく納得していただけたんです。
閉眼供養や墓石の撤去といった立ち会いも含めて、何度も現地へ足を運びました。すべてが終わるまで半年ほどかかり、時間も体力も必要でしたね。
そして、実際に経験したからこそ、管理が難しくなったお墓が、そのまま残ってしまう理由もよく分かった気がします。それほど、お墓をしまうということは、根気と丁寧な対話が必要なのだと痛感しました。

すぐには決められなかった、ご遺骨の行き先

半年かけてお墓じまいをしたあと、ご遺骨はどうされたのですか。

M.Tさま :
お墓じまいそのものは、きょうだい皆で話しあって、なんとか終えることができました。けれど、引き取った遺骨を、次にどこへ連れていけばいいのか、なかなか決められなかったんです。
兄の家の仏壇の横に置いたまま、しばらく「この先どうしようか」と思案していました。

そこから、循環葬Ⓡ「RETURN TO NATURE」とはどのように出会ったのでしょうか。

M.Tさま :
ある日偶然、テレビで知って、すぐ兄に電話をしたんです。驚いたことに兄もまったく同じテレビを同時に見ていてね(笑)。「ここしかない、これやね……!」と意気投合しました。その山が、ここ能勢妙見山だったんです。
実際に森を訪れたときは、本当に静かで、鳥の声が聞こえて、自然に包まれている感覚を覚えました。すっと心が決まったのを覚えています。
母は自然を愛する人で、この山にも生前よく登っていました。だから、「ここなら、きっと喜んでくれるはずだ」と、きょうだい全員一致で決めることができました。

お墓の心配がなくなって、「今」を楽しめるようになった

お墓じまいを終えて、どのようなお気持ちですか。

M.Tさま :
気がかりだったお墓じまいを、自分たちが心から納得できるかたちで送り出すことができて、今はとても清々しい気持ちです。森に来て、純粋に美しい自然を感じながら、父や母のことを思えるようになりましたね。

お墓じまいをして、ご自身の暮らしや心境にどのような変化がありましたか。

M.Tさま :
今は孫たちが毎週のように遊びに来るので、本当ににぎやかですよ(笑)。 お墓のことをどこかで気にかけていた頃よりも、「今」の時間をちゃんと楽しめている気がします。
半年以上かけて墓じまいと向き合って、ようやく自分たちなりに納得できるかたちで送り出すことができた。だからこそ、気持ちがすっと軽くなったんです。
それに、循環葬に決めてからは、「ちゃんと自然の役に立っている」という感覚もあるんです。樹木や森の循環の一部になっていると思えることが、自分の中ではすごく大きかったですね。
かたちは残らなくても、つながりは残っていく。そんな供養のあり方も、あるんじゃないかなと思っています。