ベランダの「LFCコンポスト」から広がる、多様な生態系ーローカルフードサイクリングの実践フィールドへ

循環葬を、単なる「ゴール(終着点)」ではなく、新しいつながりや価値観の「はじまり」として捉える。そんなビジョンと深く交差する場所を求めて、今回私たちは福岡へと向かいました。

訪ねたのは、バッグ型コンポスト「LFCコンポスト」を展開するローカルフードサイクリング株式会社(以下、LFC)です。「半径2kmの栄養循環」をキーワードに、野菜くずや果物の皮を土の栄養に変え、暮らしに循環をつくる事業に取り組んでいます。

写真提供/LFC

循環葬®「RETURN TO NATURE」を運営するat FOREST代表の小池友紀は、起業前からLFCコンポストのユーザー。循環葬の「ご遺骨と土を混ぜる時間」は、日々の「土を混ぜる体験」から生まれました。

ごみとされていたものが、循環の輪の宝ものへ。LFC福岡オフィスとコミュニティガーデンの様子を写真を中心にお届けします

アイデアが芽吹く、栄養循環の「実証ハウス」

LFC代表のたいら由以子さんと愛犬のむぎちゃん
写真提供/LFC
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玄関では、じゅんかん量や微生物の活動量を計測。無機質になりがちなデータ測定にも、循環を「楽しむ」工夫が散りばめられる。写真提供/LFC

LFC福岡オフィスは、閑静な住宅街にたたずむ築50年の一軒家。到着して驚いたのは、緑が茂り蝶が舞う光景です。「ここは本当に住宅街?」と見回してしまうほど。

代表のたいらさんは「楽しいことが好きなんです」と話すように、大切にしているのはコンポストを義務ではなく、趣味のように楽しく続けられること。その哲学は、循環を楽しくイメージさせるイラストとなって、部屋のあちこちにあふれていました。

DIY道具を収納するクラフトルーム。写真提供/LFC
カルチャーデザインルーム。楽しい循環と捨てない暮らしの実践として、「カルチャーデザイン部」を立ち上げ、思いついたことを実験する
半径2kmにどういう暮らしがあるかをあらわした図

LFCでは、食事のたびに出る生ごみをコンポストで堆肥に変え、野菜を育ててまた食べる栄養循環の実践を提案しています。

「半径2kmルーム」と名付けられた部屋には、自分からの距離を機能で分けた地域循環のイメージ図があります。半径2kmは自転車で無理なく動ける「ものごとを自分ごととして捉えられる」距離。スーパーや病院など生活インフラがそろうこの小さな生活圏の中で、誰もが参加でき、資源がめぐる「半径2kmの栄養循環」の仕組みを育てようとしています。

ベランダから始まる、150種類の多様性

写真提供/LFC
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「狭いベランダでも、スペースがあれば何か育てられるんです」。

その言葉どおり、ベランダと小さな庭だけで、一年を通じて150種類もの野菜やハーブ、花が育っています。少量多品目で多様な植物を育てると、さまざまな生き物が訪れ、特定の虫だけが増えることもないのだそう。

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水はけも風通しもよく、立ったまま水やりや収穫ができる「レイズドベッド(かさ上げ花壇)」もあります。LFCのものは、木枠には間伐材を使用し、中に地域で集めた枝や落ち葉を敷き、その上に「LFCコンポスト」でつくった堆肥を継ぎ足していく仕組み。下からは枝葉が分解されて腐葉土になり、上からは堆肥の栄養が注がれることで、豊かな土中環境ができるため、土を入れ替えなくても畑よりよく育つのだそうです。

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隣にあるのは、簡易集水グッズ「雨葉ネット」。起毛した面で雨水を集めて植物の水やりに使う、ベランダで小さな自給自足を叶えるアイテムです。

庭には、狭い場所でも空間を有効に使う知恵として、らせん状に立ち上げた「スパイラルガーデン」も。日なたや木陰など、植物それぞれに合った居場所をつくり、石の隙間にはトカゲのような小さな生き物が棲みつきます。ちなみに、引っ越してきたときにみんなで食べたビワの種をまいたら、4〜5年で500個もの実をつける大きな木に育ったのだとか。

地域へひらく、コミュニティガーデン

オフィスを出て向かったのは、福岡市東区三苫にある「三苫LFCコミュニティガーデン」。地域の人たちが空き地や公園の一角で一緒に植物を育てる場で、ここはローカルフードサイクリングの仕組みを実証するモデルとして2020年にひらかれました。

近隣地域から合計200袋分も持ち寄られた落ち葉は、大きな“タワー”のなかでゆっくりと嵩を減らし、堆肥になっていきます。

海藻や生ごみ、雑草、ワインの搾りかすなど、原料の異なる堆肥も並びます。

分解が進むと湯気が立ち、ものによっては手を入れるとほんのり温かい。「有機物は最終的に、全て土に還る」という営みを、目の前で体感できる場所です。馬糞やビールの搾りかすを足して微生物を活気づけたり、松葉の抗菌作用を病気予防に活かしたりと、まさに“実証実験”の場として活用されています。

移動できる鶏小屋「チキントラクター」も、循環の担い手の一つです。鶏が草や害虫を食べ、糞が肥料になり、また次の区画へ移っていく。「農夫の4分の1の仕事を手伝ってくれる」存在です。

ワークショップ形式で1週間かけてつくったというコンポストトイレは、雨水を利用した水洗トイレ。排せつ物も水分と固形物に分けて土の栄養へ。資源として循環させる思想が、ここにも貫かれています。

堆肥をつくり、そこから野菜をつくって食べる

LFCでは、毎日スタッフでテーブルを囲んでお昼をいただきます。忙しく働くLFCスタッフこそ、栄養ある食事を摂ることで健康であってほしいという思いから。庭やプランターの野菜、提携農家さんの野菜を使い、味つけも盛りつけも工夫を凝らした一皿は、カラフルで美しい。

「堆肥をつくるだけでなく、そこから少量でも野菜をつくって味わう。そのひとめぐりを経験すると、循環へのマインドが大きく変わるんですよね」(たいらさん)

そして調理で出た生ごみは、コンポストへ。食卓そのものが、循環の輪の一部になっています。

“ごみ”は、誰かにとっての宝もの

LFCが循環させているのは、食べものや土だけではありません。モノもまた、循環の輪の中にあります。オフィスにある備品は、そのほとんどが誰かの家で使われなくなっていたもの。机や椅子、冷蔵庫、食器棚、食器、ミシンと、呼びかけに応じて、さまざまなモノが集まりました。コミュニティガーデンの設備の多くも、地域で出た廃材や、譲り受けたものです。

落ち葉が堆肥に変わるように、ある人の目にはごみに見えるものが、ある人の目には宝ものに見える。場所の困りごとや、そこにある素材から発想していく。すると、廃材すらも風景の一部として美しく溶け込んでいきます。

半径2km圏内から生まれる希望

便利さの裏で、私たちの暮らしから“循環”はどんどん見えなくなっています。けれど、LFCさんのオフィスとガーデンには、生ごみが土になり、土が命を育て、その命がまためぐっていく姿が、すべて目に見えるかたちでありました。

毎日の小さな循環が地域を変え、生態系を取り戻し、やがて100年先の風景へつながっていく。畑を持たなくても、遠くへ行かなくても、暮らしの足元でこれだけ豊かな世界を再現できる。そう実感できた時間でした。


 

たいらさんとの対談をnoteで公開中

LFC代表のたいらさんと、循環葬を運営するat FORESTの小池による対談記事をnoteで公開しています。たいらさんがコンポストを始めた背景や、暮らしへの循環の取り入れ方など、あわせてご覧ください。

<note公開後にリンクを入れます>


文:南澤悠佳
写真:Ayaka Hirokawa