ジャーナリング(書く瞑想)で考える生と死|イベントレポート

イベント

終活をはじめる際、避けては通れない「自分のこれから」を考えること。

日常ではなかなか考えるきっかけが少ないテーマと向き合うため、2025年8月23日、循環葬®︎「RETURN TO NATURE」主催のトークセッション「書く瞑想で考える生と死ー終わりから考える未来デザイン」をGRAND GREEN OSAKA(大阪市北区)のJAM BASEで開催しました。

ゲストに迎えたのは、ジャーナリングアプリ「muute(ミュート)」開発者・喜多紀正さん、エンディングノートアプリ「つなぐのーと」開発者・染谷実賀さん、ライフエンディングの専門家で行政書士の葉室亮介さんです。司会は循環葬を手掛けるat FOREST代表・小池友紀が務めました。

この記事では、登壇者のトークや参加者の声を交えながら、イベントの雰囲気をお届けします。

未来をデザインする第一歩。ジャーナリングで自己と向き合う

イベント前半では、内省の時間を持つためのジャーナリング(書く瞑想)の魅力を紹介。さらに、自分の思いをどのようにして家族に共有するか、大切な人に負担をかけないための準備について、トークセッションを行いました。

書く瞑想ともいわれるジャーナリングは、一定時間内で頭に思い浮かんだことをありのままに書き出すこと。思考や感情、物事を紙に書くことは、心身の健康や自己認識力の向上につながるとされています。

喜多さんによると、ジャーナリングの手法自体は古くからあるといいます。

今から2000年近く前の、ローマ帝国の繁栄に陰りが見え始めた時代。第十六代ローマ皇帝のマルクス・アウレリウス(121年〜180年)は、ひたすら自分の内面を見つめ、苦悩や思索をノートに書き留めました。彼の綴った言葉は『自省録』として、今もなお読み継がれています。

自省することは、自らの内にこもるだけではありません。喜多さんは不登校の子がジャーナリングをすることで再び学校へ通えるようになったエピソードに触れながら、「自省でパワーをチャージして、外に出て関係性を築くきっかけになる」「自分の無意識に気づき、本来の自分を知ることで、生きやすくなるのでは」と、その可能性について話しました。

自分の思いを家族へと「つなぐ」大切さ

ジャーナリングで自分の思いを整理したら、それを家族に共有することも終活では欠かせません。

染谷さんは、「つなぐノートは『つながること』が大切。ご自身が書くだけで終わらせるのではなく、自分の思いを誰かに知ってもらうために、ご家族とも共有しながら使ってみてください」と話します。

葉室さんも「たとえば、考えていることを書いた紙をテーブルの上に置くだけでも、家族がそれを見て思いを知るきっかけになる。伝えることが大事です」と、共有することの大切さを強調します。

さらに、「意思表示を書くだけでも遺言(メッセージ)にはなる」ものの、「法律的なことが関わるならば公正証書などが必要」と、葉室さんは続けました。

その人に必要な手続きはケースバイケースのため、ご自身の想いを整理してから専門家に相談すると、よりスムーズに進められます。

自分を知るきっかけに。ジャーナリングを体験

後半のワークショップでは、55個の問いが書かれた「リフレクションカード」(※)を使って、実際にジャーナリング(書く瞑想)を体験しました。

2人1組になって55枚のカードから1枚のカードを選んでもらい、それぞれが問いに対する想いを紙に書き出します。その後、1つの問いに対してお互いがどのように考え、どんな気づきがあったのか、書いた内容をシェアする時間を持ちました。

 

<問いの一例>

「今あなたは幸せですか?」
「あなたが一番『生きている』と感じた瞬間はいつですか?」
「あなたが亡くなったら、どのような人間だったとして覚えられたいですか?」

参加者の皆さんは初対面ながらも、身振り手振りを交えながら自分の考えを話し、相手の発言に対して、うなずきながら聞いたり、質問をしたりと、会場全体はにぎやかな様子になりました。イベント終了後に寄せられた感想もご紹介します。

<参加者から寄せられた感想の一部>

「(ジャーナリングが)すっごい楽しかった!あっという間でした」
「いろいろと考えなきゃいけないことがあるんだなって思いました」
「自分の気持ちが見えてきた」
「大切な人に話をしようと思った」

理想の最期から考える ― 今、どう生きるか

イベントの冒頭、司会の小池は次のように話しました。

「自分の終活を考えるために葉室さんに面談をお願いしたところ、葉室さんから『誰に看取って欲しいですか?』『誰に何を相続してもらいますか?』『パートナーは小池さんの意思に対してどう思っていますか?』など、細かな質問をたくさん受けました。『こんなに考えることがあるんだ……』と、正直混乱状態になりました」。

終活で考えることは多岐にわたります。だからこそ、「自分は最期、どうありたいのか」を書き出し、それを言葉にして誰かと共有することで、心が軽くなったり、新しい一歩を踏み出すきっかけになるのかもしれません。

その気づきは、今をどう生きるかにもつながっていくのではないでしょうか。

登壇者プロフィール

登壇者3名と司会

喜多紀正|ミッドナイトブレックファスト株式会社 代表取締役
早稲田大学理工学部、ミシガン大学大学院理工学修士。日本たばこ産業株式会社、ボストンコンサルティンググループを経て現職ミッドナイトブレックファスト株式会社代表取締役。主にジャーナリングアプリ「muute(ミュート)」を担当。 

染谷実賀|ミッドナイトブレックファスト株式会社
大阪大学経済学部卒。日本生命保険相互会社入社後、事務システム企画・開発に長く携わる。その後、システム監査やデジタルマーケティング領域におけるガバナンス等、IT統制業務に従事。現在はミッドナイトブレックファスト社にてエンディングノートアプリ「つなぐノート」の企画・開発を通じて社会課題の解決に取り組んでいる。

葉室亮介|あさひグループ共同代表/あさひ行政書士法人代表社員
島根大学法文学部卒、あさひグループの複数の法人役員を兼任。弁護士、税理士等関連専門家との幅広いネットワークを駆使し、おひとり様や親亡き後問題等複雑な案件処理を得意とする相続・終活のエキスパート。お客様の想いを聴き、その実現のためのリスク説明や代替案の提案を通じ、一歩先行く「徹底したお客様本位のサービス」を使命としている。

司会:小池友紀(at FOREST 代表取締役CEO)
広告クリエイティブの世界で15年活動。ホテル、コスメ、こども園などのコピーライティング、コンセプトメイキングを手がける中、先輩や祖父母の死、両親のお墓の引越しをきっかけに、日本の墓問題と向き合う。死と森づくりを掛け合わせた循環葬を創案し、2023年夏に関西・北摂の霊場 能勢妙見山にてサービスをスタート。

「muute リフレクションカード – 自分を深く知る55の問い」。詳細はこちら


文:南澤悠佳