【海外事例】自然葬の先進国・イギリスの現状と実践

自然葬を知る

世界に目を向けたとき、自然葬はどのように行われているのでしょうか。

循環葬®︎「RETURN TO NATURE」では、2024年1月にイギリスの自然葬地を視察しました。自然葬の運営形態や現場での実践を、海外事例として紹介します。

イギリスにおける自然葬の位置づけ

イギリスで「森林葬(Natural Burial)」と呼ばれる葬送が始まったのは1993年です。アメリカ(1998年)、ドイツ(2001年)、オランダ(2003年)、韓国(2000年代)などと比べても、イギリスは自然志向型の葬送が比較的早い段階で始まった国といえます。

その背景には、伝統的な葬儀への違和感や、環境保全・エコロジー概念の浸透による死生観の変化がありました。加えて、公営墓地の財政的課題、墓地管理を包括的に規制する統一法の欠如といった制度的状況のもとで、民営の自然葬地が柔軟に活動できたことも自然葬の広がりを支える要因となりました。

さらに、後述するNPOによるガイドラインの策定や、2000年代以降の政府による調査報告・公的ガイダンスの整備を通じて、自然葬は徐々に社会的な正当性や信頼性を獲得し、イギリスにおける葬送の一つの選択肢としての地位を確立していきました。国内に約300の自然葬地が存在し(2024年1月当時)、30年以上にわたる運営実績があります。

自然葬を支える社会的仕組み

イギリスにおける自然葬の普及にあたっては、1991年に設立されたNPO「Natural Death Centre(ナチュラル・デス・センター/以下、NDC)」が大きな役割を果たしてきました。

NDCは、自然葬に関する情報提供、ガイドライン整備、利用者支援を行い、自然葬を社会的に理解可能な選択肢として位置づける役割を担っています。

代表理事へのヒアリングを通して、イギリスの自然葬がどのような前提と仕組みのもとで運営されているのか、以下の点が見えてきました。

  • 環境保全、自然保護の視点が大前提としてあること
  • 葬地の許可申請時に、開発許可、環境影響評価、地質調査、洪水対策、埋蔵文化財等調査を行いカウンシルの承認を得る必要があること
  • 自然葬事業者は、既存の葬送業者とは一定の距離感を置いている事業者が多いこと(既存の葬送業者が「商業的」になりすぎているという背景があるため)
  • 自然葬のみをビジネスとしているケースは少ないこと(農家や不動産業などその他の事業の副業的なビジネスとして行っている)

イギリスの自然葬の事例

この視察ではウィンチェスター、オックスフォード、ロンドンと、10箇所の自然葬地を巡りました。その中から、特徴的だった場所を紹介します。

事例1: Sustainability Centre

サウスダウンズ国立公園内に位置するSustainability Centreは、自然葬地のみならず、エコロッジ、環境教育施設、カフェなどを併設した複合施設です。施設の主な役割が屋外教育センターであることから、敷地内で子どもたちが遊んだり学べたりできるようにもなっています。

自然葬を「死のための場所」に限定せず、環境教育や地域の交流拠点としている点が、循環葬も森を通じて、人と地域、そして社会をゆるやかにつなぎ続けるサービスを目指すことに、示唆に富む事例でした。

植生については、1960〜70年代には在来種でない針葉樹の植林がありましたが、現在は在来種の広葉樹への転換を行っているそうです。

事例2:Sheepdrove Woodland Natural Burial Ground

NDC館長におすすめいただいた、広大な有機農場の中にある自然葬墓地です。墓標は最小限の杭と鋲のみと、シンプルなものでした。

結婚式場やプライベートダイニング、音楽リサイタル、人生のお祝いができるグリーンイベント会場、さらにはロッジやオフグリッドのハウスと、さまざまな施設が併設されていました。ご遺族の方に向けたサービスを展開するにあたり、参考になる事例でした。

事例3:Harbour View Crematorium, Funeral Home and Woodland Burial Ground

イギリスでは自然葬といえば、土葬の考えが根強くあります。そうした中、イギリス国内では珍しい、火葬場を併設する自然葬地Harbour View Crematorium, Funeral Home and Woodland Burial Groundを訪れました。火葬率が99.97%にのぼる日本において、自然葬先進国における火葬の位置づけや運用の実態を知ることは欠かせないと考えたからです。

この訪問で強く印象に残ったのは、そこで働くスタッフさんたちの佇まいでした。スタッフさんたちと交わした挨拶は、明るく軽やかな雰囲気でした。丁寧さを保ちながらも、必要以上に形式張らない姿勢は、私たちが森の見学や埋葬の際にお客さまと接する際にも大切にしたいあり方とも通じていました。

事例4: Leedam Aylesbury Vale Natural Burial

Leedam社は、農家と提携しながら自然葬サービスを提供する民間企業です。イギリス国内に複数の拠点を展開しており、土地所有者との連携や拠点拡大の方法が特徴的でした。

埋葬場所は、測量図だけでなく位置情報システムを用いて管理されており、ITツールを活用した運営を行っています。埋葬後の場所確認や記録の正確性という点で参考になりました。

この事例を参考にして生まれたのが、フォレストメイト(ご遺族さま)にお渡ししているお手紙「スリープレター」です。循環葬では埋葬場所の管理に高精度な座標計測システムを導入し、スリープレターを通じて、ご遺骨を埋葬した場所がひと目でわかるようにしています。

事例5:Westmill Woodland Burial Ground

葬儀会のオスカーといわれる「GOOD FUNERAL AWARDS」を受賞している自然葬地です。シンボリックな石の周りに螺旋状に墓標のプレートを配置していました。簡素な東屋とゲート、フェンスのみでしたが、程よい素朴さと自然さが感じられ、風景となじんでいるのが印象的でした。

循環葬の森を訪れた人が、心地よく過ごせるルールづくり

最後にご紹介する自然葬地では、造花や装飾品、食べ物などが多数持ち込まれ、自然環境への影響が懸念される状態が見受けられました。故人を偲ぶ行為が、結果として自然保護と衝突してしまうケースであり、運営側による適切なルール設定の重要性を示す事例でした。

この事例を受け、循環葬では森の入り口に訪れた方の安全保護と自然保護のため、守ってほしいルールをお伝えしています。

森によって内容に多少の違いはありますが、共通するのは「持ち込まない」「持ち出さない」ことです。手ぶらでお越しいただき、故人を想う気持ちと、その時間を大切にしてもらうこと。森の中で生きている植物を傷つけず、持ち帰らないようにすることをお願いしています。

イギリス視察から得た示唆

今回の視察ではNDCを訪問し、イギリスの自然葬の現状をヒアリングするとともに、各地の自然葬地を訪れました。また、私たちからは日本の葬送事情や循環葬のヴィジョンや現在の取り組みについてプレゼンテーションを行い、循環葬はNDCが公開している自然葬地リストにアジアで初めて掲載されることになりました。

視察を通じて、専門家と連携し、学術的な裏付けをもったかたちで取り組むことと、メイン事業として成立するオペレーションを構築すること。その両立が不可欠であると改めて確信しました。

循環葬では、こうした海外事例も参照しながら、日本の土地・文化・制度に即した埋葬のあり方を検討し続けています。2026年1月下旬には、アメリカ・サンフランシスコの自然葬地を視察する予定です。こちらも、あらためてご報告いたします。

※本記事は2024年1月22日〜31日の視察内容を元にしています。

<参考文献>
内田安紀「イギリスにおける自然葬の出現と普及ーその社会的要件からー」『宗教学論集』第38輯平成31年1月

森に還る研究所について

森に還る研究所は、自然葬への理解をより深め、その価値を社会へ広く届けることを目的に、循環葬®︎「RETURN TO NATURE」を運営する at FOREST株式会社によって、2025年7月に設立されました。

海外における自然葬の事例や、学会での発表内容、自然葬に関する各種調査結果などを収集・整理し、発信していきます。


文:南澤悠佳