循環葬が描く、人と森の未来─日本景観生態学会とやんばるの森で得た示唆

森林保全について、倫理的に訴えるだけでなく、持続可能な実践としてどのように社会と接続していくか。

こうした課題に対し、循環葬®︎ RETURN TO NATURE(以下、循環葬)は研究と実践を往復する取り組みとして、今後さまざまな学会での発表を重ねていきます。

その第一歩として、2025年6月21日、22日に開催された日本景観生態学会において「森林保全と収益化」をテーマに初めて発表を行いました。

発表内容や学会で得られた示唆、学会後に訪れた沖縄・やんばるの森で得た学びを振り返りながら、循環葬が描こうとしている人と森の未来像をまとめます。

日本景観生態学会での発表内容

日本景観生態学会の様子。森林の専門家からも、循環葬に対して「自分も(埋葬されるなら)こういうかたちが良い」といった共感の声を多くいただきました

今回発表したのは、循環葬の第二拠点である千葉・真野寺の調査結果です(記事最後に発表時のポスターを掲載)。

まず、照葉樹林(憩いのエリア)とヒノキ林(埋葬エリア)を比較し、それぞれの植生の違いを明らかにしました。その後、循環葬の森として整備するにあたり、ヒノキの伐採と照葉樹種の移植、真野寺の植生に適した樹種の植栽を行っています。

種多様性の変化を調べた結果、整備前と比べて埋葬エリアの種多様性は約2倍に向上しました。

誰にでもいつかは訪れる死(埋葬・供養)という世代を超えた長期間の営みを組み合わせることで、管理放棄された社寺林を天然林へと誘導し、持続的な森林保全と、そのために必要な収益を創出し得ることを示しました。

森づくりをデータ化する意味

学会での発表にあたり、循環葬のパートナーである神戸大学・石井弘明教授とともに森の植栽調査やマッピング、生物多様性の分析を実施しました。それにより、循環葬の森づくりがどのように自然環境へ寄与しているのかを客観的に説明できる指標を整えることができました。

今後は定点観測の仕組みを各拠点へ展開し、感覚的な「良くなった」ではなく、実績として積み上げられるデータとして森の変化を示していきます。

やんばるの森が示す、自然と人の共生モデル

循環葬は、100年後の森を育て、自然と人の共生を未来へとつなぐことを目指しています。

学会発表後には、2021年に世界自然遺産に登録された「やんばる」を視察しました。

やんばるは、いわゆる“原生林”ではありません。かつて薪炭採取のために大規模に伐採され、その後に管理が行われずに森が荒れた歴史をもちます。しかし、再び人の手が入り、保全活動が行われることで、現在の豊かな森の姿を取り戻しました。

循環葬の拠点となる森も、かつては人の営みがあった場所です。一度荒れてしまった森に、再び人が関わることで豊かになっていったやんばるの姿は、循環葬が目指す「人と自然の共生」と重なります。

100年後の森づくりを見据えながら、持続可能な森林保全のモデルをつくり、社会へと実装していく。今回の日本景観生態学会での発表は、人が関わることで森が豊かになる未来へ向けた、重要な一歩となりました。

森に還る研究所について

森に還る研究所は、自然葬への理解をより深め、その価値を社会へ広く届けることを目的に、循環葬®︎「RETURN TO NATURE」を運営する at FOREST株式会社によって、2025年7月に設立されました。

海外における自然葬の事例や、学会での発表内容、自然葬に関する各種調査結果などを収集・整理し、発信していきます。