自然だけでなく、人と地域もつなぐ―循環葬の森で働くひと vol.2

循環葬の森

森をご案内することは、人と人、そして人と地域をつなぐこと。

千葉・真野寺で、ご見学者さまやフォレストメイト(ご契約者さまとそのご家族)をご案内するのが、フォレストアテンダントの小林です。

都内でライターや編集者、教員として経験を重ね、その後、地域おこし協力隊として南房総市に移り住みました。

「移住支援とフォレストアテンダントの仕事は似ている」と話す彼女に、この仕事を始めたきっかけや仕事で大切にしていることを聞きました。

多岐にわたるキャリアから辿り着いた、「農」と「地域」

小林さんが千葉・真野寺のある南房総エリアに住むことになったのはどうしてでしょうか?

もともと、私は千葉県の県北と呼ばれるエリアで生まれ育ちました。大学卒業後は京都に本社がある広告代理店の東京支社で働いたほか、編集プロダクションでの編集業務など、さまざまな仕事を経験しました。
でも、「東京は骨を埋める場所じゃない」と、10年ぐらい思い続けていたんです。農に携わる暮らしへの憧れもあり、2019年に千葉県南房総市の地域おこし協力隊として移住しました。それがきっかけで、農業や農作業体験の案内、キッチンカーの運営など、幅広く地域活動に携わっています。

「人間だけが自然に還れない」という違和感

そこから、循環葬®︎RETURN TO NATURE(以下、循環葬)と出合ったきっかけを教えてください。

私が多拠点居住プラットフォーム「ADDress」で家守(やもり※)をしていて、そこにat FORESTの小池さんが宿泊されたことです。小池さんからフォレストアテンダントになってくれる人を探しているという話を聞き、「自然に還る」ことに共感する周囲の知人や友人に声をかけました。
でも、意外と「やります!」っていう人がいなくて。私自身も循環葬の考え方に共感していたので「誰もいないなら、私がやってみよう」と自然に思い、フォレストアテンダントになりました。

周囲の方が興味はありながら躊躇されている中、小林さんに迷いや不安はなかったのでしょうか?

もともと好奇心が強く、興味があることはすぐ始めるタイプなので、迷いや不安はなかったですね。
農的な暮らしを始めてから、自分が自然の一部であることを実感するようになっていました。だからこそ「人間だけが自然に還れないのはおかしい」という気持ちが強くあったのだと思います。
亡くなったら、生物として自然の循環に戻っていくのは当たり前のこと。その流れに線を引く現代の埋葬法には疑問を抱いていたんです。
それと、真野寺に足を運ぶうちに「すごくいい場所だなぁ」って思っていて。住職の伊藤さんのお人柄や過去に生きた人々の痕跡を感じられる森の様子など、自分に合うものがありました。

目の前にいる人の話を「聴く」こと

これまでのキャリアはフォレストアテンダントにどのように活かせていますか?

どの仕事にも共通しているのは、目の前の方のお話にしっかりと耳を傾け、言葉の端々に隠された思いを汲み取ることです。
個人的には、フォレストアテンダントと移住支援はとても似ていると感じています。住むところを選ぶのも埋葬先を選ぶのも、その特定の場所が合う人には合うけど、合わない人には合わない。
これまでお会いした方を思い出すと、ご自身の価値観と循環葬の価値観に重なる部分があるからお越しになっているように思います。

印象に残っているエピソードがあれば、教えてください。

この前、埋葬に立ち会わせていただいたときに、ご家族の皆さんがものすごく晴れやかな表情をしていらっしゃっていたのが印象に残っています。こうした表情をたくさん見たいなって思いました。
ご家族の方が「こういうとき、こうだったね」と故人を語ってくださり、場にその方の存在がよみがえるように感じました。私は当然お会いしたこともないんですけれども、そうしたお話を伺っていると、とても親しみを覚えます。
亡くなった方の人生が垣間見える、感慨深い時間だなと思いました。

森で、人と人・地域をつなぐ

小林さんは、これから千葉・真野寺の森を訪れる方と、どのような関係を築いていきたいですか?

循環葬に興味関心を持たれている時点で、見学に来られた方もご契約された方も、皆さん似たような価値観や死生観を持っているように思います。そうした方々にとって、ここが新たな人間関係を結ぶ場になり、さらには地域活性にもつながったらうれしいですね。
移住支援も同様ですが、いらした方をご案内するにあたって、単なる情報提供やサービスの紹介では意味がないんですよね。せっかくご縁ができた場所だからこそ、好きになってもらって何度も通ってもらいたい。それには、人と人、人と地域とのゆるやかなつながりも大切になってきます。
循環葬は、人間が自然の循環に還るだけでなく、人と人との関係もつないでくれる場だと思います。さまざまなものが循環しながら、一つの場をみんなで育んでいく――そんな未来を思い描いています。

プロフィール

小林朋子

2019年に千葉県南房総市へ移住。地域おこし協力隊として、移住相談や定住支援を担当し、「仕事・家・コミュニティ」を大切にしたサポートを行う。現在は、自ら有機農業や自然農に取り組みながら、農業体験の案内や多拠点居住サービス「ADDress」の家守として地域活動に深く携わる。また、キッチンカー「とんび茶屋」を運営し、自身が育てた有機米のおむすびなどを、さまざまなイベントで提供。地域と深く関わる経験を活かし、フォレストアテンダントとして人と人、人と地域をつなぐ役割を担う。